【ブックレビュー】その後の不自由-「嵐」のあとを生きる人たち
このような本を手に取りました。
その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)
- 作者: 上岡陽江,大嶋栄子
- 出版社/メーカー: 医学書院
- 発売日: 2010/09/01
- メディア: 単行本
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タイトルにある「その後の不自由」「嵐のあとを生きる」
その両方のキーワードに惹かれたというか、
現在の気持ちにしっくりきたので。
ただ内容は、ダルク女性ハウスの上岡陽江氏が
著者のお一人であることからも分かるように、
基本的には薬物等の依存症を抱え、そこから回復しながら
生きている女性たちへの、様々な角度からの
助言、メッセージといった本でした。
けれども、依存症の問題がない人であっても、
何らかの理由で心のバランスを大きく崩し、
その後なんとか寛解まで至っても、密かに
払拭できない生きづらさを抱えている人(主に女性)
--特に自分のように、心の問題の背景に、自らの生育環境が
あるのではないかと考えている人--
にとっては、とても役立つ本ではないかと思います。
例えば、「境界線を壊されて育つということ」という章では、
依存症にならない人の家庭と、依存症の女性の家庭(緊張感がある家庭)の
構造の違いが語られています。
そこでは、「そこそこ健康な家庭」というのは以下のようなものであると
説明されています。
真ん中に私がいて、そのまわりに私を助けてくれるような形で、父や母やきょうだいがいる。次に、祖父、祖母、イトコたちがいて、その次に、友達や、近所のおじさんおばさんがいる。そんなふうにやくわりと自分のまわりに応援団のようなものをもっている
(p.016)
それに対して、依存症の女性は、「父のアルコール依存症や暴力、両親の不和」
といった原因から、原家族のなかに緊張感があることが多いといいます。
さらに、「境界線を壊されて育つ」という言葉で説明されていますが、
上岡氏の実体験も絡めて考えると、以下のような家庭環境にあることが
多いようです。
家では「言わなくてもわかる」ことが求められるので、とても緊張感が高く、へんに仲がよくて胸苦しい家族でした。聞いたら怒られる。言われなくても雰囲気からそのときの母の望みや本意を絶えず探り、望みどおりに動かなければならない。
(p.20)
それは「暴力がなくても、境界線を壊されて"頼りになる奴"として生きていく」
ことだと説明されていますが(p.21)、
これには自分自身にも覚えがあり、大変胸が苦しくなりました。
数日間悪夢を見たほどです。
ただ本書は、そのような生育環境にあったことを、
恨んだり悔やんだりしようというのではなく、
そのような「私」をまず客観的に理解して、
その上でどのように他者(援助者)とつながっていけば
良いのか、どのように心の困難と付き合っていくか、についての
ヒントをくれる本です。
生きづらい、生きるのが大変という言葉は巷でたくさん
使われていますが、その背景に何があるのかを
理解して、さらにそこから具体的に「生き延びる術」を教えてくれる人は
多くないと感じています。
本書はそういったことを、そっと心の内の寂しさに寄り添いながら、
教えてくれる一冊だと思います。
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本ブログは素人による雑記です。
現在治療中の方、また受診を考えられておられる方には
専門家への相談をおすすめします。